2018年7月8日
「守られた約束」 ヨシュア2:9
基督聖協団目黒教会 牧師 横山聖司
ある小説の一場面である。ブリュッセルのホテルに近い老舗に老婦人の店員がいた。主人公の野田は妻と一緒に、その店に寄ってテーブルクロスを買う。野田は同じものを恋人にも買い与えたいと思い、ホテルへ戻ったあと、もう一度、妻には内緒で外に出て同じテーブルクロスを買う。そのとき、彼は用心を込めて「このテーブルクロスは、妻の知らない友人に送るのだから、どうかそのつもりでいてほしい」と頼む。微妙なニュアンスの言い訳を、相手は万事理解し、「ウイ、ウイ」と答えて目立たない包みに変えてくれる。野田は、(この婦人は人生経験を積んでいる人だ。おそらく彼女自身も、過去に隠れた贈り物をもらった経験があるのだろう)と考える。ところが後日、このテーブルクロスが犯罪と関係し、日本大使館を通じて、店に問い合わせが来たとき、ブリュッセルの老婦人がどう対処したか。作者はこう書いている。〝あの…静かな老婦人は、野田との暗黙の約束を守り通したのだった。…たとえ日本の総理大臣からの問い合わせであっても、彼女は口を割らないに違いない。〟
ヨシュアは二人のスパイをエリコにさし向けた。エリコの王はスパイの潜入を察知し、町のあちこちに捜査の網を張り巡らしていた。二人をかくまっていたのは、ラハブという遊女だった。ブリュッセルの女が野田との暗黙の約束を守り通したのは、ひそかな贈り物をする優しい男の気持ちを愛でたからだったが、ラハブの場合、口を割らなかったのは、神が約束の地をイスラエル民族にお与えになっておられると信じたからだった。「ふたりの人がまだ寝ないうちに、彼女は屋上の彼らのところに上って来て、その人たちに言った。『主がこの地をあなたがたに与えておられること…を、私は知っています』」。(ヨシュア2:8~9)。
トランプ大統領がアメリカ大使館をエルサレムへ移転した。ラハブと同じ理由ではあるまいか。混迷するパレスチナ問題。パレスチナ人は、先祖ラハブのように、イスラエルの国家を承認することである。イスラエルは、ラハブにしたように、パレスチナ人に真実と誠実を尽くすだろう。「『私の父、母、兄弟、姉妹、また、すべて彼らに属する者を生かし、私たちのいのちを死から救い出してください。』その人たちは、彼女に言った。『あなたがたが、私たちのこのことをしゃべらなければ、私たちはいのちにかけて誓おう。主が私たちにこの地を与えてくださるとき、私たちはあなたに真実と誠実を尽くそう。』」(ヨシュア2:13~14)。

カテゴリー: 礼拝メッセージ

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